筝歌「袖香炉」

「あやなし」の思ひ出
昔、お筝のお稽古が「ろばさん トコトット…」「…下照る道に出で立つ乙女」「岩間とぢし氷も今朝は…」などから少し恰好ついてきた頃、「袖香炉」を習いました。その時、『闇はあやなし』を意味の通る他の言葉に置き換えるのはむずかしい、花鳥風月の歌にしては意味ありげで暗め、などなど感じました。
それもそのはず、web上で曲の背景を改めて詳しく教えて頂いたのでした。


Online Concert「袖香炉」
http://www.shamisen.info/c.sodekoro/sodekoro.html


   「袖香炉」  作曲:峰崎勾当
           作詞:餝屋次郎兵衛(かざりや じろべえ)
春の夜の闇はあやなし
それかとよ香やは隠るる梅の花
散れど薫りはなほ残る
袂に伽羅の煙り草
きつく惜しめどその甲斐も
なき魂衣ほんにまあ
柳は緑紅の花を見捨てて帰る雁


【解説】
峰崎勾当が、師の豊賀検校が1875年(天明5年)に亡くなったのを悼んで作った追善の曲である。
「春の夜の闇はあやなし梅の花 色こそみえね香やは隠るる」凡河内躬恒(古今集)の本歌取りで始まるが、『散る・煙り・惜しめど・甲斐なく・見捨てて』など悲しみを表す言葉がたくさん並べられていて、追悼の気持ちが強く歌われている。

いにしえより春の夜の闇はあやなしの歌にもよまれる
梅の花の香りのように
例えお姿が見えなくなっても
とよ香(豊賀検校)の思い出やご遺業は
私達の心に懐かしい薫りとなっていつまでも残っています

に入れた袖香炉に伽羅の香を焚きしめて偲んでおりますと
煙りのように儚くなられた方がいっそう思い出されて
涙がこぼれてしまいます
どんなにお慕いしても甲斐もなく
尊いいのちの儚さが本当に残念でたまりません
諸行無常が世の常とは申しますものの
柳は緑を深くし花は紅
色づく春がもうそこまできておりましたのに
まるで 春を待たずに北へ帰る雁のように
私達を見捨てて旅立たれてしまいましたね

*袖香炉・・・毬のような球形で、内側が地球独楽(ジャイロ)のように常に水平を保つように出来ている携帯香炉。袖に忍ばせ薫りを燻らせて楽しんだ。起源は、唐の皇帝が車に掛けていた吊香炉。


★ で、精巧な袖香炉の根付を発見するも、30まんえん以上で敢え無く敗退。曰く、『「袖香炉」という美しい響きに惹かれて…名工が生んだ「正倉院文様・金工細工」 歴史のロマンを丸ごと、きものの装身具で蘇らせる』
  メーカー: いとほしby森田空美
  名工  :井尾建二(いおけんじ)
    大人の逸品
    http://www.pal-shop.jp/user_data/itohoshi04.php
    http://www.pal-shop.jp/products/detail.php?product_id=21669