浦の苫屋

同じく 源氏物語の変貌―とはずがたり・たけくらべ・源氏新作能の世界
  「源氏物語の変貌」  久富木原 玲 著   (株)おうふう


紹鴎の侘茶の真髄といわれ、三夕の歌で有名な、

 「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮」(定家)
は、源氏物語石巻 からであるが、源氏が夏の月夜に琴を弾じて入道と語る場面の枯淡の趣を、式子は同所の「松風」に拠って更に枯れさびて、
 「色色の花も紅葉もさもあらばあれ冬の夜ふかき松風の音」(式子)
と、冬に変え、「冬の御方」であり、後の大堰邸の「松風巻」にも繋がる荒涼たる風景を吹き抜ける風に、“待ち続ける明石君”の心象風景を詠んだ。

独自の表現を次々に生み出した式子内親王後白河天皇皇女、前斎院、以仁王の同母妹。住む所を転々と変えざるを得なかった生涯。恋愛ご法度、結婚できない時勢の内親王
で、新進国学者金科玉条?金字塔?たたき台?たる馬場あき子氏の「式子内親王」も読むことにした。20年以上前の発行で筑間書房に在庫なく、定価の倍の古本文庫本を申し込む。


それにしても、「研究」とは面白いものだ。寝転びながら本を開き、その恩恵に浴する平和な?私。