歌集「辰巳泰子集」 

セレクション歌人 19 辰巳泰子集」   邑書林


20年前、第一歌集で現代歌人協会賞を獲ってしまった「紅い花」にご対面。水原紫苑「びあんか」と一騎打ちの鍔迫り合いで、同時受賞となったのだそうです。巻末・藤原龍一郎談。他に、辰巳泰子編集出版の文芸誌「月鞠」より収録。
知っている歌が、装丁の色が違ったり、編集が違ったりして登場すると、また新たな登場のように思えるが、やはり芯は変らない。
辰巳泰子略歴」と「初句索引」付き。学術書のよう。


帯より、『 橋桁にもんどりうてるこの水はくるしむみづと決めてみてゐる 』。“化野の歌姫”。
どうも、妖怪「玉藻の前」を連想する…?


散文「私本安達ヶ原伝説」、面白い。戯曲に三十一文字が挟んであり、絶妙。『抽斗からひっぱり出してまた仕舞ふ 苦しまなければわたしはヒマだ』の嵌め込み具合… 悲劇って可笑しい。


で、セレクション歌人とはなんぞや? ※
全33巻、別冊1、番外1。ちょっと笑える構成、プロ歌人は笑えないのかも。次回配本は「林和清 集」です、に、なぜ「暗香浮動月黄昏」の梅花マニアが登場するのか、まさか〜とよく考えたら、それは林和靖で北宋の人であった。
※ それは、いわば現代歌人撰書で、『短歌のプライド』 なのである。
『韻文表現としての短歌が、未成熟な口語の氾濫によって、言葉自体が結晶度を獲得できず、韻律も定型感覚も弛緩してしまう』ことの無い、歌集なのですよ、きっと。


と、思いきや、邑書林(ゆうしょりん)のHP。
http://www7.ocn.ne.jp/~haisato/
セレクション歌人
藤原龍一郎・谷岡亜紀完全プロデュース。
短歌、それは増殖と分裂を繰り返して浮遊する魂。焦燥とケセラセラ、信頼と煩悶のあわいを絶えず流れ続ける恐るべき大河。世紀を跨いだこの無秩序を、すみずみまでご堪能下さい。
ですって。