北斎の娘

「北斎の娘」  塩川治子  邑書林


写楽は葛飾北斎、という解釈。
大塩平八郎の乱の頃、老人だった。娘も雅号「応為」の一流絵師であった。
それなりに面白い本。小説にしては言葉の面白味が少なく、研究書にしては脚色がある。別な経路で得た、“女のお腹の上に生きているタコを這わせて描く”というような情報の薬味を自分で振りかけて読むと、総合的にかなり面白くなる。
他者の風景画を見て、実際に行って描いたか否かわかる、と「オレも登って描きてー」と鋸山に向かうところがよかった。 前には伊豆の山から房総を描き、今度は房総の山から伊豆・富士を描く。 電車やロープウェイのない時代に旅行し、自力で高い山に登って自分の目で見るという、絵の為の活力に感激。 あの平地風な絵が、普通の旅人と同じ場所からは描けない、ということがよくわかった。