ピアノ

先日、“淡海山荘” のピアノの埃を払い、鍵盤に久々の光を当てた。
20年程前から手指の変形関節症で弾けなくて蓋を閉めたままだった母に、「今更指を大切にしてもそう得るものは無いし、痛くないのなら存分に使い切ってみては?」と勧め、上に載っている写真や置物や新聞まで諸々を片付けて、前方だけ開いて譜面台を組み立てた。
が、鍵盤と目と楽譜と右手と左手が、全く別な存在のままの様子。
ピアノ科御用達の楽譜ばかりで、私も弾けそうなお子様連弾曲は何処、で、ポピュラーソングを編曲したお楽しみ楽譜を発掘し、伴奏練習開始に成功した。エーデルワイスを私が歌い、何回も何回も合わせ、片手から両手に進んだ。ブラボー!86歳。


もっと数ヶ月でも早く弾けるようにしていたら、脳にも良かったのではないかと悔やまれる。
調律無しのいまいちな音色ながら、真剣に手や体を、昔取った杵柄スタイルで動かす姿に、「…よしよし、重畳!」という感じ。


メガネを作り直し、調律を頼む…明日につながる明るい予定も記憶が続かないが、そこに、ふと思い出した風に同じことを言ってみる私。この芝居気が先か、お茶やお能の芝居気が先か、関係があるのは確かだ。かくして、自分をも発見してしまう今日この頃なのであった。