読書日記「夢野久作の能世界」

11/7の金剛永謹能の会、国立能楽堂は、檜書店。
夢野久作の能世界―批評・戯文・小説  「夢野久作の能世界」   批評・戯文・小説  
  発行・書肆心水   2009.9.30刊行   夢野久作ゆめのきゅうさく


  「書肆 しょし」 とは、何ぞや? …本屋。書店。 (goo辞書)
      PCの文字転換に入っていたので、びっくり。


まず、「ドグラ・マグラ」とやらで、有名らしい。
帯に曰く、
夢野久作能楽関係秀作選   ドグラ・マグラ流、能入門
小説家・夢野久作が/すなわち喜多流謡曲教授・杉山萠圓が/またの名、能楽博士・べし見鈍太郎が 語る ちょっと怪しげな魅力あふれる 能のいい話 』


さらに、表紙カバー裏側、濃い紫地に黒い活字で読みにくく怪しげに、
「熊」と「能」の一節が。
手足が無いから「、、、、」を取って「能」。
『 心のキレイさと品よさで、すべてを現わそう(表わそう、でないところが意味深?)とするもの…。 手や足で動作の真似をしたり、眼や口の表情で感情をあらわしたり、背景で場面を見せたりするのは、技巧としては末の末…』


1889(明治22年)〜1936年(昭和11年)の47年の生涯。
そんな昔!に、カフカもびっくりの変てこ話や、南方熊楠も引きそうな迫力、すごい!と思ったら、みな同時代の人々だった。
ポーの影響を受けているそうです。
巻末著者略歴は、さまよえるオランダ人のようだが、幻のようでいて、地に足着けて早い晩年の姿に収束しているところがすごい。父・杉山茂丸=政治の黒幕屋さんについては別課題としよう。2歳の頃、母@大島家と離婚し、再婚。


能楽関係は、もうずっと単行本続きで、高価なのにたじたじのところ、これは面白そう。目次が「¥を節約しますか、好奇心に応えますか」と決断を迫ってくるので、心の声に従った。既存の著作のリメイクも、まとめて読めるので便利だ。夢野久作を名乗った最初の作品にして、唯一の能関係小説であるらしい「あやかしの鼓」もあり。


目次の大項目 「能とは何か ・ 喜多流とともに ・ 能と人びと ・ 小説」 は平凡なるも、中味の小項目は面白く、ばっさばっさと長刀を振るう。真っ当だが、反動的でもある。
お免状の項には、くすくす笑い。「この曲をお稽古しても宜しい」と書いてあるだけで、本人もそれが「出来る」とは公言できない…。
五流の成立過程的な特徴は、明快だが、語弊ありそう。