観能:春日龍神 龍神揃

金剛永謹 能の会 第23回 東京公演  国立能楽堂


■ 能「春日龍神龍神
おもしろかった。『八大竜王が百千の眷属をひきつれて現れ』、舞台から橋掛りの幕前までずらりと勢揃い。あたかも全体が一匹の龍のように、頭から跳ねたり、尻尾から跳ねたりウェーブして、元気に泳ぎ回っていた。龍女(金剛龍謹、廣田泰能)の相舞も龍神2匹(廣田幸稔、豊嶋幸洋)の相舞も、よかった。
竜王が白頭に頂く龍の大きく盛大なこと。面がすごい。
  前シテ…小尉・小牛作 室町時代
  後シテ…鼓悪尉(つづみあくじょう)・赤鶴作 室町時代
彫りの陰影が素晴らしく、目や頬の立体具合に威厳があった。プログラムにその画像があるのが画期的。


  龍女…泥眼 ニ面・河内作
  龍神…黒髭・河内作と近江作。 釣眼(つりまなこ)・洞水作 など



「唐天竺へ、行くのか!行かないのか!さあ!いかに!」と立派な杖で地を突きながら詰め寄るところ、威厳と迫力あった。明恵上人(宝生欣哉)たじたじ。上人の生涯のいつ頃を想定しているのかな。西行法師や明恵上人の人物像って、むずかしそう。
『僧が偉大であればあるほど、能の中で、その僧に影響を与えた龍神が大きく見える仕掛』(プログラム)なのだそうです。


末社の神(石田幸雄)も語り方がそらさない感じでよかった。
お囃子のみなぎる力、素晴らしい。前場の宮守の翁とお供(今井克紀)の説得の間も、神のパワーを送り続けるような後ろからの響き。
  大鼓・亀井広忠  小鼓・大倉源次郎
  太鼓・小寺佐七   笛・松田弘


狂言「咲嘩」(さっか)
「咲嘩」とは詐欺師など好ましくない人物の隠語、と語られていました。狂言「口真似」のお客は酒乱の男、「咲華」のお客は詐欺師で、内容は同じ感じ。
主人(深田博治)と、伯父を演ずるすっぱ(万之介)の初対面の挨拶など、怪しい関係でも、対面と礼儀を重んじ、波立たぬようにカバーする言葉の知恵の文化が興味深い。
万作さんに、おばかな太郎冠者はどうも似合わない。人間国宝になられたそうです。万之介さんは、よく響くお声。何年も拝見しているうちに、舞台の上の方々が何だかお年を召したみたいで、そんなに自分も時を経てしまったのかと感無量。