家永三郎! 

気がついた始めからずっとおじーさまだった家永さんが、
能猿楽の思想史的考察」 法大出版局
で、お能をどう“いじって”いるのだろうと、手にとって検分。初版1980年4月、1990年第4刷。目次は「いかにも」の表題で、
  前編 十五年戦争下の能・謡に対する弾圧
  後編 大成期猿楽能の思想史的考察
け、け、という感じでページを繰ると、これが結構面白い。あほらしい「弾圧」描写に、あのせんせ、このせんせもその時代を越えていらしたのか〜と、妙に感心してしまった。今また、お能と人権・平等・平和というようなことも、50年後にはあほらしくなっているのだろうか。それは、どんなふうな時代だろうか。


しかし、『 忠君愛国と・・・精神鼓吹の文学として時局下の謡曲の位置を擁護しようとする能楽界の主張、対、謡曲を階級文学にまで到達するところの「真の国民文学」に属せしめがたい非勤皇の文学に属せしめる林房雄 』という所に、
にゃーんだ、せんせ方もプロレタリア派も、懲りない面々だったのだわ、という感じ。何であれ、歴史は活字にしておくべきだと思った。


『謡曲の詞章に拠る猿楽能の思想的基調の考察』は、天下国家の祝寿、皇室、武士、殺生を生計とする人々、女性、貴族、地獄、生きる悲哀、解脱成仏、などについて、長々例題を挙げて、結局何なのだ!というのは読んでのお楽しみ〜♪


カバーのカットは、沢田芳流著「謡ひ手ほどき」の「小道具概略」より、だそうで、このカバーに惹かれてしまったのが運のつき。活字極小、というより遠近感のある活版印刷を平板な写真に移した感じで見にくい。でも読むのだ。


で、巻末宣伝「日本芸能史」全7巻、面白そう。執筆者…林屋辰三郎、村井康彦、中村保雄、川嶋将生、赤井達郎、熊倉功夫、権藤芳一。芸能(旧漢字)史研究会とは何ぞや?