「初めに言葉あり」コンサート

伊能美智子作品発表会  紀尾井ホール


印象に残った曲
■「夫人の死を聞くマクベスのモノローグ」
        バス独唱・佐藤征一郎 ピアノ・伊能美智子
モノローグという雰囲気が、とても素晴らしかった。CDで聴いているはずだが、劇的で迫力があって新鮮だった。セヴィラの「うわさは大砲のように…」という低い歌も愉快で好きだが、佐藤マクベスの歌は、シビアな状況に直面したユーモアで、やはり面白い。


■「こころすなほに」 山頭火
        合唱・アンサンブル“のぞみ” 指揮・吉田公子
山頭火の俳句って、ぶっとんでいて、歌になってもおもしろい。「こころすなおに」「ごはんが、ごはんが」「たけた」「ごはんが、ごはんが、ごはんが」「こころすなおに」「ごはんが」…
曲も合唱も面白かった。無伴奏。


■「六月の花嫁」 作詞も伊能美智子
        合唱・カレンズ 指揮・鈴木和江 ピアノ・田中 光
よかった。「あなたを産んだのも 育てたのもわたし」「あなたはわたしのもの」というところで、いやな母親だと思った。しかし「わたしは優しい母親の誇りを取り戻し」「今日の花嫁を見て下さい わたしの娘なんですよ」「娘なんですよ」と終るまでの心の旅の経過が感動的だった。


■「海を視て」 飯田善国 詩
         バス独唱・佐藤征一郎 ピアノ・伊能美智子
…「言葉の無力の底から噴き上げてくるもの」「砕け散る波の現在が 砕け散る波の過去へとめくれて…言葉の表皮で編み上げられた世界を…」「二つの心は 二つの心のま…沈黙を通してのみ感じあえる…」「既に発せられた人間の思念が…消えようとするのを 切り裂いてしまう」
「初めに言葉あり」から辿った終わりはここのようだ。
     (仮名・漢字は主に聴こえた感覚です)