唐衣 からごろも

家永三郎の社会構造的お能解明の本を読んでいて、ふと、と思ったこと。
能「杜若」の唐衣(長絹)は二条の后・高子の形見で、初冠は業平の形見。能「松風」は、行平の冠と狩衣(長絹)。能「井筒」は、業平の直衣?(長絹)と初冠。


「唐衣」は、業平が、禁断の恋の高子を偲んで、彼女の唐織の着物をまとって面影を追うのが元で、伊勢物語「月やあらむ」の頃の状況らしい。東下りの「か・き・つ・ば・た」の歌は実は激しい感情の回想ということか。
何気なく「杜若」を観ていると、井筒や松風のように、長絹の表すものは彼氏のものかと思ってしまう。「杜若」は、だから、「私は杜若、でも高子かも、はたまた業平か…」と曖昧複雑な様相になるのが実感わく感じ。