万酔会

ただいま〜
残念、駆けつけ飛び込み、カメラをごそごそ取り出せなくて、棒の画像ナシ。大入り満員。
狂言「棒縛」
かっこよかった。棒がマッチ棒のように見えるのでは?などいろいろ勝手に想像していたところ、確かに普通より細く見えたような気がするが、改めて棒の大きさに感心した。家に持って帰ってぶんぶん回せるようなものでもないし、練習大変そう。突っ張った棒の先を上げたり下げたりが舞で、腕が真直ぐ伸びている!おニクはどこに寄せたのだろう!?どっかと座るところに何となく愛嬌のある存在感。次郎冠者があまり見えなかった…どの方かなあ。ごきげんの宴に影がさして、主人のご帰館。棒をひょいと動かすのが、“まめ”な感じで、いつもどこかに現れる ぶ さん。くすり。


「雷」「鈍太郎」は、初めて見る狂言でした。
狂言「雷」
自分を「藪医者です」と紹介し、お客がつかないので他所に稼ぎに行くそうで、来られるほうにご愁傷様というところ。突如、藪さんが独りで、のけぞってワッと言っては逃げ回る、稲光がしているらしく、すごーく面白かった。ところに景気よく雷登場。赤い髪ふさふさと、撥を振り上げ、前に鞨鼓を下げている。ちょっと暴れて、いきなりすてーんと舞台に伸びてしまった。なんでも腰を傷めたそうで、藪さんが5寸釘のようなもので針治療。トンカチで打つところがさすが狂言。「あ、いた」と雷どん。藪さん怖がっていたのに、だんだん強気になって治療代を請求すると、お礼には、眷属を連れて、ばりばりとカミナリを落としに来てあげるそうで、そこのところに地謡があり、ぶ さんも登場、紋付袴のメンバーが歯切れよく謡う。ぶさんの黒装束に紋が無いのはサイズがなかったから? なかなか面白い狂言でした。
治療に「頭のてっぺん」まで打ったりするのは、「梟山伏」にも出てきて、可笑し味もあるが、頭頂部には経絡?のツボがあるそうなので、現実の治療に一般人が驚く感じを取り入れたのかも。


狂言「鈍太郎」
まあ、とにかく憎たらしい(演技の)鈍太郎なのだ。下京・上京の二人の女が抜群の上手さで、にくにくしい鈍太郎を受け止めていました。
3年留守にして鈍太郎が帰ってくる。後でわかったことだが、まず帰ったのが本妻宅。次の別宅でも、共に薙刀遣いとか棒?遣いとかの男と再縁したので、危ないですよと追い払われ、なんと、それで出家を決めてしまう。妻たちは、実は健気に鈍太郎を待っていたのであって、それぞれの存在を知っており、話し合って鈍太郎を戻そうとする。
墨染ではない出家姿で、チーンチーンと鉦を打ちながら鈍太郎再登場。事態がわかると、今度は、条件を出し、出家するぞと鉦を鳴らして脅す。古妻の家には5日、可愛妻の家には25日、とか図に乗ると、賢い若妻がとりなし、それやこれやで、挙句、世間体のため、二人の妻の「手御輿」に乗って帰りたいと主張。若妻のおつむは撫で撫で、古妻の頭の上ではがんがん鉦を鳴らし(耳がヘンにならなかっただろうか、すごい音量)、いやみな男は本当に女たち(男性ですが)が両手で組んだ「手御輿」に乗って“自宅”へ帰っていったのでした。
妻役に力量があり、抑えた人格が伝わるようなもの言いに「鉄輪」とは違う結末が納得できる。3人揃って芸達者な舞台でした。


伝統芸能とは、何を伝えるものなのだろうか。


太田美術館の実物展示にいろいろな大きさの鉦がありました。鳴らすトンカチ型杖?もあり、今日の鈍太郎の鉦の杖を見ても、葵上や道成寺、鉄輪のオニの「打杖うちづえ」は、これなのではないかと思いました。見た目より硬く丈夫で、致命傷を与え得る道具なのかも。でも、怨みに暴れるオニにしては華奢な武器の感じで、怨霊でも上品に?力仕事はしないのだろうか??それとも、鉦の打杖というもの自体に何か力があるのだろうか。