前奏曲

三鷹のホールで東大オペラ部の公演に接してから、あのチャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」の前奏曲が、TVのBGMで結構流れていることに気がつきました。編成、音色はいろいろですが、どれも緑の大地を遠くから捉え、だんだん近づく映像で、「チャイコフスキーの音のスケールとメランコリーと、ロシアの果てしない大地」からすると、いささか箱庭的画面が、音の恩恵で叙情たっぷりに広がる感じ。
あの時、地味なホールの地味な舞台の地味な装置が、あっという間に、海の向こうの広大な国の田園地帯になり、ずーっと近づくと、なんとか夫人の領地の人々の日常が動き出し、人形劇の人形がいつのまにか人間になってドラマが始まる特撮のような感覚になりました。
オペラ部でオーケストラと共演できるにゃんて、すごーい!


世界大戦後の生活難の時代に、ムシロが下がっているような掘っ建て小屋に住んでいるオーケストラの団員が、楽器を背負って山奥や離島の小学校を訪問し音を奏でると、子供達の目が輝き、帰る時にはどこまでもどこまでも見送っている、という古い映画がありました。
人生の音楽の始まりは、大人からのプレゼントなのかも。