『響座』

「花の翳」 金春信高 岩波書店

「響座とは、発声に際して、声帯を響かせる面積や位置を言う。」
「洋楽では、胸部、口腔、頭部などの響鳴腔を使って、五の声を七にも十にも増幅したり、声の質を美しく、また、やわらかく潤色したりする。…洋楽の歌謡は、生理的な声そのものを鑑賞するようである。」
「邦楽では、声を鑑賞するよりは、その語り口を玩味する。響鳴腔を使って、声を増幅したり潤色したりはしない。それでは声の密度が落ち、日本語としての開合がはっきりせず、説得性に欠けるからである。浪曲、講談、義太夫、謡曲など、語りの声楽では、五の声はあくまでも五でなければならない。私どもはこの声を地声と呼んでいる。鍛えぬかれた地声によって語られる語り口の妙味と説得性…」
「この響座は、玄人でも必死になって開拓し鍛錬しないと、容易なことにはひびかせられないものだが…」
んなの、できるわけにゃーい! 素人的に表現すれば、大きな声で「歌う」ことはできても、話す声の大声は、難しい。また、日本語の発音はむずかしい。数年前に思ったことが、まだそのまま続いている。そもそも、日本の伝統文化に接すること自体が、異文化交流だ。